経営労務ニュース・・経産省 介護両立支援のアクション公表

2024326日付経済産業省は、仕事と介護の両立をめぐる問題は、我が国の未来を左右する重要な課題であり、その解決にはすべての企業の協力が必要であります、として全ての企業に知ってもらいたい介護両立支援のアクションを公表しています。

※詳細は、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します」をご参照

 

<社会的背景>

家族介護の担い手の変化がある

2023年には、共働き世帯1278万世帯、専業主婦世帯517世帯と倍以上の開きとなっていて、そして、主な介護者と要介護者本人との続柄も変化が生じている。

2004年にその続柄は主に、「配偶者」「子」「子の配偶者」であったものが、ここ20年で、子の配偶者は減少し、子が増加傾向にある。

つまり、いわゆる「嫁介護」は減少し、「実子」や「配偶者」が主たる家族介護の担い手となったと言える。これは「働く誰しもが家族介護を行うことになり得る」ということを意味する。

少子化に伴う生産年齢人口の減少が、企業における人材不足を招いている。

特に企業規模が小さくなるほど、人材不足は深刻な状況にあり、中小企業などは代替人員の獲得が困難であることから、社員の離職や休職が事業に与える影響も大きい。

2030年には、家族を介護する833万人のうち、約4割(約318万人)が仕事をしながら家族等の介護に従事する者(「ビジネスケアラー」「ワーキングケアラー」などと呼称)となると予測されている。加えて、介護者が家族介護にかける時間は、男女ともに1日2時間余りであり、現役世代の可処分時間を大きく減少させている。

仕事と介護の両立困難による経済的な影響

現状のままでは、2030年には、約9兆円にのぼる経済損失が見込まれ、この損失額を減らすことは、社会全体が対応すべき課題である。

としている。

 

  <実情・現況と課題>

一方、仕事をしながら介護に直面する従業員の実情と企業への期待として、主に3つの特徴を認識しておく必要があるとしている。

1.自身の介護状況の開示への消極性

育児と異なり、明示的な始まりがなく、緩やかに発生することもある。本人に自覚がないまま、有給休暇を使って両親のサポートを行うなど、実質的な介護が発生していることが多く、従業員から開示を行うタイミングを逃してしまう場合もあり、自身のキャリアへの影響を懸念して、介護の状況を開示することに抵抗がある事例も生じている。

2.介護状況が個々人によって多様かつ可変であり、将来予測が困難

一度仕事と介護を両立できたとしても、要介護度が進んで改めて両立体制を組み直すなどの負担が発生する可能性もある。

加えて、介護はいつ終わりがくるかもわからず、10年以上仕事と介護の両立が必要になってくる場合もあり、個別性が極めて高い。

急に当事者になり得ることから、従業員のリテラシーを高める情報発信は非常に重要である。介護離職者向けのアンケートにおいても、「どのような職場の取り組みがあれば仕事を続けられたと思うか」という質問に対して、「仕事と介護の両立支援制度に関する個別周知」と回答する割合が半数を超え、個別の制度周知に対するニーズが高かった。

3.肉体的負担に加えた精神的負担の増加

介護発生による負担としては、直接的な介助(食事・排泄・入浴等)に起因する肉体的な負担だけではなく、介護サービスに関する情報収集、ケアマネジャーや介護事業者とのコミュニケーション、見守り、外出の付き添い、医療的介入等における意思決定といった精神的な負担にも目を向ける必要がある。

以上の3つである。

 

 <アクション>

 企業における取組む事項としては、3つのスタップを示している。

STEP1 経営層のコミットメント

☑ 経営者自身が知る ☑ 経営者からのメッセージ発信 ☑ 推進体制の整備

 

STEP2 実態の把握と対応

☑ アンケート・聴取 ☑ 人材戦略の具体化 ☑ 適切な指標の設定

 

STEP3 情報発信

☑ 基礎情報の提供 ☑ 研修の実施 ☑ 相談先の明示

 

+企業の実情・リソースに応じて、人事労務制度の充実、外部の専門家設置など個別相談の充実など、取り組みの充実を促している。

 

大企業においても約5~6割は従業員の現時点の介護の状況の把握を行っていない。また、今後、従業員に対して。介護が必要となりうる親族を把握する予定がない企業は約7割に上るとしている。

また企業において仕事と介護の両立支援が進まない構造的な課題として、

 

企業経営での優先順位が低いまま → 積極的な取り組み策を打つという判断が困難に

→ 社内の介護リテラシーが向上しにくい環境を生む → 周囲の理解が不足 →

介護の状況開示を控える行動をとる → 企業内の影響が可視化されない →

経営者は、「介護の両立支援ニーズがない」と認識してしまい → 企業内で徐々に生産性の低下が生じてしまう 

 

といったいわゆる負のサイクルに陥る可能性が高い、構造的な課題が存在している。

としている。

 

※所見 

要介護の親、夜中に親の徘徊について、警察から連絡を受けていて疲弊している社員は、休息をとるために半休を取得するのは、罪ですか?

親から、調子が悪いという連絡を受けて、仕事の都合をつけて様子を見にいくことは、罪ですか?

と違和感をもって仕事をしていた時代がありました。

企業は、 その人がいなくても仕事が滞らない、事業が継続していけるようにして、そして仕事の付加価値を上げ続け、業績を維持発展していけるよう努力する。

なにもしなければ、ある日を境に中核人材を失っていきます。企業の衰退は、5年あれば終着します。

中小企業の経営者は、社員一人一人のことをよく理解できています。

しかし、経営層の皆が共通に理解できているとは限りません。

 厚生労働省の助成金も積極活用するなどし、

経営層からのコミットメントが、まさに肝かと思われます。