2024年4月23日(火)第6回「労働基準関係法制研究会」が開催され、これまでの議論の整理が行われました。(第1回2024年1月23日)
この研究会は、今後の労働関係法制について、包括的かつ長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法附則第12条に基づく、労働基準法等の見直しについて、具体的な検討を行うことを目的として厚生労働省労働基準局長が学識経験者の参集を求めて開催される研究会です。
第6回の研究会において、
① 労働時間法制 ②労働基準法の「事業」 ③労働基準法の「労働者」
④労使コミュニケーション
の各論点について、考え方と今後の議論の方向性につき、意見が出されていて、以下、主観的に意見を抜粋します。
詳しくは、厚生労働省ホームページ ‘労働基準関係法制研究会第6回資料’ご参照ください。
●労働時間法制に関して
・事業所外みなし労働時間制度については、「労働時間を算定しがたいとき」の該当性の問題や、司法上の法的安定性を考慮しつつ、制度創設当初から現在にかけてのテクノロジーの進歩も勘案した、抜本的な見直しが必要ではないかとの意見
(※本件に関しては、最高裁判所第三小法廷は、4月16日、事業場外みなし労働時間制の適否が争点の裁判で、適用を認めなかった二審判決を破棄し、審理を高等裁判所に差し戻している。
二審は、日報で具体的な労働時間を把握できており、「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとしたが、記載内容の正確性に関する具体的な事情の検討が不十分とし、検討に際しては、正確性を確認するための一般的な方法を示すだけではなく、使用者が、その方法を現実的に取り得る可能性や実効性も明らかにする必要があるとされている。)
・現行の管理監督者等の範囲について、本来管理監督者等に当たらない労働者が管理監督者等と扱われている場合があると考えられることから、要件を明確化し、取り扱いの適正化に努めるべきという意見
・法定労働時間を週44時間とする特例措置対象事業所について、8割の事業所がこの特例措置を使っていない現状に鑑みると、すでにその役割を終えていると考えられるという意見
・法定休日の特定や1週1休の原則を貫くことを含めて、4週4休制の廃止・改善について制度の要件を明確にすることを含め検討すべき、疲労回復の程度は休養のタイミングと量に依存するため、週に1回は休日が必要という目安としてのルールは必要との意見
・割増賃金規制は、企業が時間外等の労働を抑制する効果が期待されているが、反対に労働者に対しては、割増賃金を目的とした長時間労働のインセンティブを生んでしまう。また、その中には非生産的な労働もあり、これを防ぐことが必要ではないか、より直接的な労働時間の規制が必要ではないかという意見
・割増賃金も過重労働への補償という趣旨に着目するならば、処遇の問題でもあり、ある程度労使自治に任せてもよいのではないかという意見
●労使コミュニケーション
・過半数代表者選出の民主制を担保することが重要である。また事業所の従業員構成は様々であり、多様な職種・雇用形態の意見をまとめる必要がある中、どのようなルール設定がふさわしいか考えるべきという意見
・過半数代表者は一人では負担が重く、現行法令上明確にしていない、複数人の過半数代表者を認めるべきという意見
・過半数代表者への支援として外部専門家等を活用することも考えられる
・外部専門家等の活用パターンは、
(1)過半数代表者として外部専門家を選出する
(2)過半数代表者が外部専門家に相談できるようにする
(3)過半数代表者の権限を外部組織に委任する
といったものが考え得る。(1)(2)の場合は、弁護士や社労士などの専門家など・・どのようなパターンを認めることとするのか議論すべきという意見
・外部専門家等活用の費用はどうするか、利益相反、労使自治がどう考えるか、という意見
以上今後の研究会での意見がさらに検討され労働基準法の抜本的な改正へと発展していくのか、みていきたいと思います。