奨学金を返還しながら働く若者の負担を軽減するとともに、府内・県内事業者における人材の確保・定着につなげることなどを目的として、返還支援制度を導入した事業者に対し、大阪府をはじめ、奈良県、兵庫県、京都府ほか自治体においては独自に支援金、補助金制度が実施、拡充されています。
兵庫県においては、日本学生支援機構にかかる返還支援補助金の拡充が図れていて、支援対象企業を県内に本社のある中小企業等とし、対象企業の県認定制度取得時状況により、補助期間が異なるよう(5年、10年、17年)拡充運営がなされ、従業員への補助の対象年齢が緩和されるなどが行われています。
※県認定制度は SDGs宣言企業、ミモザ企業、ワーク・ライフ・バランス(宣言、認定。表彰)企業などがある。
補助額は、企業において作成される当該対象者にかかる支給計画(事業計画)に基づき
・対象従業員1人あたりの年間返済額を補助対象額とし、その3分の1の額
・補助上限は年6万円。ただし、企業の対象従業員に対する支出の2分の1の額が6万円を下回る場合は、その額 とされています。
奈良県補助額は、日本学生支援機構にかかる返還支援を対象とした補助金として、企業が従業員に対して支給する手当額、または返還送金額に2分の1を乗じて得た額以内の額で。1企業につき50万円が補助上限。
京都府補助額は、企業が正社員に対して支給する手当額の2分の1以内、最大月額9万円、補助期間正社員1人につき最大6年間とされています。
大阪府においては、日本学生支援機構のほか、大阪府育成会を対象とした奨学金返還支援制度を新たに導入した事業者に最大50万円の支援金。
支給要件として
・所定の中小企業等の定義に該当すること
・奨学金返還支援制度を就業規則、賃金規程等に定め、従業員等に周知していること
・大阪府域内に本店または事業所があり、かつその事業所において雇用保険被保険者である従業員等を1名以上雇用していること
・申請日から起算して5年以内に雇用保険被保険者である従業員等を雇い入れる意思がある、または奨学金返還制度の対象となる従業員等が1名以上いること
・制度の内容を自社のホームページ等において公表明示すること
などその他要件が定められています。
大阪府の本支援金は、奨学金返還支援制度を導入したという事業者に、定額で支給され、支援金の金額について、奨学金を借りている従業員の有無は関係ありません。
また、奨学金返還支援制度の支援内容(金額、期間、条件等)は、制度導入事業者が自由に設定できることなどが、特徴・ポイントとなっています。
(2024年7月12日時点の各自治体独自の支援制度となっています。下記受付期間含め、詳細は各自治体ホームページをご参照ください。)
※受付期間<例>
兵庫県 令和6年4月1日(月)~令和7年2月28日(金)
奈良県 令和6年度受付期間未公表
京都府 令和6年4月1日(月)~令和7年2月28日(金)
大阪府 (第2期)令和6年8月20日(火)~令和6年9月30日(月)
奨学金返還支援制度は、企業が競争力のある福利厚生を提供する手段の一つであり、奨学金返済の負担は重いため、優秀な人材を獲得する上での魅力的な要素となり、また従業員の定着率を高めることができ、また従業員が自己成長に励むことで、モチベーションが将来的にも向上し、定着と働きがいを高める効果が期待できます。
従業員の教育支援やキャリア形成を積極的に支援する姿勢は、企業のイメージ向上にもつながります。
一方、奨学金返還支援制度を利用する従業員に対して経済的支援を提供するため、他の従業員などとの不均衡が生じる可能性があります。
もとより奨学金返還支援制度を導入する際には、税務上の処理や報告義務が生じる場合があり、返済金の補助や支援金の支払い、経済的支援のための予算確保などが必要です。
その後の従業員の離職やパフォーマンス低下などのリスクが生じる可能性もあります。
メリット、リスク、社内制度規規程を適切に管理し、補助金・支援金を上手に活用したいものです。