経営労務ニュース・・遺族年金制度改革

会社員などが亡くなった場合、残された家族の生活を保障する遺族厚生年金が大きく変わる見通しです。

これまでの制度では、

夫が亡くなったとき、子がいない妻の遺族厚生年金は、年齢的に就業や再婚などをしやすい30歳未満の場合には有期給付とし、就業などが簡単ではないとみられていた30歳以上の場合には期限の定めのない生涯給付が行われています。

一方、夫は就労して家族を支えることが可能であるという考え方などを前提に、妻の死亡時に55歳以上であり、55歳からすぐに受給できるのはなく、実際の受給は60歳からになっています。

今般、厚労省の諮問機関である社会保障審議会より

30歳以上で夫を亡くした妻の受給期間も5年間として、妻を亡くした夫は、55歳未満でも5年受給できる、とする

・夫を亡くした妻が40歳から65歳未満まで一定の条件で受給できる「中高齢寡婦加算」も新たに受給し始める人から段階的に縮小・廃止を進めていく(国民年金の寡婦年金も同様に段階的に縮小・廃止を検討)

・受給期間が短かくなる点については、死亡者との婚姻期間中の厚年期間に係る標準報酬等を分割する死亡時分割(仮称)の創設(婚姻期間中の期間中の厚生年金加入実績をもとに、残された配偶者の65歳以上の老齢厚生年金に一定上乗せする)する、という案などが示されています。

 

すでに受給している人や60歳以上で死別した人や子育て中の世帯は現行どおりとするなどとあわせ、女性の就業の進展、共働き世帯の増加等社会経済環境の変化や制度上の男女差を解消していく観点を踏まえながら、慎重な見直し、改革が進められています。

 

<補足参照>

現行制度の遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、次のいずれかの要件にあてはまる場合に、その遺族が受け取ることができる。

    厚生年金の被保険者である間に死亡したとき

    厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やケが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき

    1.2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき

    老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

    老齢厚生年金受給資格期間を満たした方が死亡したとき

 

※①と②の場合は、死亡日の前日における保険料納付要件あり

※⑤の場合、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る

 

死亡した者に生計を維持されていた次の遺族に支給される。

 ① 子のある妻、または子(遺族基礎年金を受給できる遺族)

 ② 子のない妻 夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は、5年間の有期給付

 ③

 ④ 死亡当時55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から)

遺族基礎年金の支給対象となっている夫の遺族厚生年金は、55歳から支給。

子とは、18歳到達年度の末日までにある子または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子。

 

「生計を維持されていた遺族」とは、死亡した被保険者と生計を同じくし、恒常的な収入が将来にわたって年収850万円以上にならないと認められる こと、という要件を満たす遺族。